わさびと言えばわさび田での沢わさびを思い浮かべるかも知れませんが、岩泉町のわさびはカラマツなどの林の中や木陰の畑で育っています。
わさびは山間の渓流に自生する日本原産の植物で、江戸時代に駿河国(今の静岡県)で栽培が始まったと言われています。澄んだ空気と清流に恵まれた岩泉町では古くから自生していましたが、昭和40年代の終わり頃から栽培されるようになりました。50年代には約20ヶ所にわさび田が作られたそうですが、山が急なために大雨で流されてしまい、やがてわさび田は放棄されてしまいました。
しかし、冷涼な気候と広大な山林はわさび栽培に最適で、昭和59年頃から林の中でわさび栽培が行われるようになりました。このわさびは、主に茎を利用する「畑わさび」で、現在では練りわさびの原料として日本一の生産量を誇っています。
発芽した小さな苗を、森の中に植えていきます。
やがてモサモサ成長します。森のおばけのようです。
春を迎え、花が咲く前に「花芽」を出荷します。
アブラナ科のわさびは、菜の花のような白い花を咲かせます。
山の緑が濃くなってくると、木陰ですくすく成長します。
夏の暑い時期に収穫し、沢沿いの作業場で土を落とします。
岩泉町のきれいな水と清々しい空気の中で育つ畑わさびは、鼻にツンとくる辛さとともに、ほのかな甘みがあるのが特長です。4月下旬、岩泉の桜が散るころになると「花芽わさび」の収穫時期を迎えます。「花芽わさび」は生のまま出荷したり、醤油漬けなどに加工します。また、6月中旬から9月中旬にかけて収穫される茎や根は、主に練りわさびの原料として加工しています。岩泉町の畑わさび生産量は約500t。森の中のわさび園では、夏の間収穫、出荷下ごしらえ、洗浄の作業が続きます。
「畑わさび」と「沢わさび」は栽培上の区分で、どちらも日本古来の「本わさび」です。これに対し、一般の練りわさびは「西洋わさび(ホースラディッシュ)」を使っているものがほとんどで、本わさびとは風味が異なります。
日本古来の香辛料であるわさびは、根をすり下ろして使うだけでなく、花は刺身のつまや醤油漬け、茎は練りわさびの原料などに余すところなく利用されてきました。
わさびの辛み成分・アリルイソチオシアネートは解毒酵素の働きを促すだけでなく、食欲増進にも効果があります。
もし新鮮な葉や茎が手に入ったら、刻んで熱湯をかけ、醤油漬けにしておくととても重宝します。