いわいずみ短角牛を含む「日本短角種」は和牛全体の1%にも満たない稀少な肉用種で、北東北と北海道で1万頭弱が飼われています。その半分以上が岩手県で飼われており、特に岩泉町、久慈市山形町、二戸市は全国有数の産地です。
いわいずみ短角牛のルーツは、藩政時代に南部藩(今の岩手県北部~青森県東部)で飼われていた「南部牛」にあります。
南部牛は主に三陸沿岸の海産物や塩、鉄などを内陸に運び、内陸からお米やお酒、生活物資を運ぶ“荷役牛”でした。「塩の道」と呼ばれる小本街道を3~4日の行程で荷物を運ぶ中で、岩泉の急峻な山を越えるには、傾斜に強く従順な南部牛が最適だったのです。
明治時代になると産業構造の変化や流通網の発達から荷役牛の役割は減少し、都市部では食生活の変化から肉用に牛が育てられるようになりました。
明治4年、アメリカから岩泉町にショートホーン種(短角種)が導入されると南部牛との交配が行われるようになりました。こうして生まれたのが「いわいずみ短角牛」です。
地元では「短角牛」や「赤ベコ」と呼ばれて親しまれています。
岩泉町の南西部・釜津田地区は、藩政時代から優良な南部牛「釜津田牛」の産地として知られていました。明治4年にショートーホーン種が導入され、南部牛との改良が行われますが、明治10年に開催された第1回内国勧業博覧会(万博)には「陸中国釜津田村産牡牛」が出品されています。釜津田地区は昔から改良意識が高く、優良牛の生産に努めてきた歴史があり、短角牛発祥の地としての意識が若い生産者にも受け継がれています。
写真は、釜津田肉牛生産組合長の佐々木久任さん。代々短角牛の改良にかかわった岩泉町を代表する生産者です。
いわいずみ短角牛は、寒さに強く、放牧に適した強靱な身体を持ち、泌乳量が多く子育て上手。牧草や野草を食べながら適度な運動をし、子牛は母牛の母乳をたっぷり飲んで丈夫に育ちます。
この「夏山冬里方式」と呼ばれる独自の飼養方法と、短角牛の持つ遺伝的な特徴により、黒毛和牛の肉が脂肪分の多い“霜降り肉”になるのに対して、いわいずみ短角牛の肉は低脂肪で滋味深い赤身肉となるのです。
いわいずみ短角牛は、地域の人々の努力によって、岩手の厳しい自然条件に適応するように、長い年月をかけて大切につくり上げられた地域の宝物です。
短角牛肉は低脂肪で旨みのつまった赤身に特徴がありますが、その秘訣は「夏山冬里方式」と呼ばれる飼養管理にあります。
夏は山の広大な放牧地で運動をしながら、たくさんの牧草や野草を食べて過ごし、冬になると里の牛舎に降りて、手間ひまと愛情をかけてもらって大切に育てられるのです。
なお、販売される「いわいずみ短角牛肉」には10ケタの個体識別番号が付けられており、「いわて牛TBCシステム」のホームページから検索すると、いつどこで生まれ、誰が育てたかを見ることができます。
いわいずみ短角牛肉は、低脂肪でタンパク質が多く、グルタミン酸などの旨み成分をたくさん含んだ赤身肉が特徴です。
これは、短角牛の遺伝的特徴と、成長期に山で放牧することにより、余計な脂肪をつけず、健康的に育った証しでもあります。
最近の研究では、放牧育ちの牛肉は体内で脂肪を燃焼させるアミノ酸(L-カルニチン)を多く含むこともわかってきました。
赤身の美味しさに定評のある短角牛肉に注目が集まってきた今、山の中で愛情たっぷりに育った幸せな牛の肉は、楽しい食卓を演出し、食べる人たちに力を与えること間違いなしです。
硬めの部位は煮込みや挽肉に、ロースやサーロインなど脂肪ののった部位はステーキやすき焼きなどに向いています。
同じ短角牛肉でも部位次第で違った雰囲気の料理が楽しめますので、お好みの部位を探して見て下さい。
”赤身が美味しい”いわいずみ短角牛は、岩手県内・東京・関西など各地のレストランでご利用頂いています。
レストラン様向けに業務用ブロックを販売しております。
部位について: 業務用ブロックのカタログ(PDF)